(ノン・フィクション) これは、自分の愛車にエアロパーツをまといローダウンし、 自らの行動範囲を狭めてしまったある男が、 事態の打開・改善の為にとった行動を、物語化したものです。 対策をこうじればこうじるほど、取り返しのつかない事態へと墜ちてゆく、 愚かな男の散り様を、とくとご覧下さい。 ------ 目次 ------ ※2002年1月頃のお話です。
■第一話『エアロと共に擦り減る神経』 その男の車は巷で流行のドレスアップが施されている。 低車高と分厚いフロントスポイラー。 地面すれすれのスタイルを眺め、その男は酔いしれる・・・。 「う〜ん、カッコイイ…」 しかし、ひとたび街中に繰り出すと状況は一変する。 ちょっとした地面の凹凸、急な勾配の変化・・・・。 その度にフロントスポイラーがゴリゴリゴリと音を立てて削れてしまうのだ。 そんな日常に男は疲れを感じ始めていた。 「もうこんな生活いやっ!」 気づけば、あそこのガソリンスタンドの出口も、近所の大型ショッピングセンターの立体駐車場も、 近道に使えるあの踏切も、国道の大通りに出来た大きな轍を横切る時も、 めちゃくちゃ近所のコンビニ駐車場段差も、友達宅付近のあの坂も、 すきならーめんやさんの・・・あそこも、ここも〜! みーんな、 ・・・・・・擦りまくる始末。(T_T) 後ろの車も周囲の目も気にせず(ホントはスゴく気にしてる…)、 超低速でダメージを最小限にくい止めながらの通過。 行きたい所に行こうとしても、 「擦るのが怖いしなぁー…」 小旅行なんてしようものなら、 「擦るのが怖いしなぁー…」 擦り減っているのは、エアロよりむしろ神経だったのかもしれない ------- “地面すれすれのスタイル=カッコイイ=実用性が犠牲になる”の図式は、ドレスアップを楽しむ人にとって言わば常識。 だが男にはもう、こんな日常を続けていく気力はなくなっていた…。 「こんな分厚いエアロにするんじゃなかった・・・。」 今思えば、この後悔がのちに起こる悲劇の始まりだった。 しかしこの時には知る由もない・・・。
■第二話『勢い任せのお釣りはデカい』 ある日の事、スノーボードに行くために外したおいたフロントスポイラー、眺めているうちに沸々と欲望が漲ってきた。 エアロパーツは装備しながらも、もう少し気を使わないで走りたい ------ ほんのささやかな願いだった。きっと同じ状況なら、誰しもがそう思うはず。 そう・・・・、 「エアロ、ちょん切っちゃえ〜!」 (* ̄∇ ̄*) 思いたったら最後、もうライン沿いにジグソーで切断を始めていた。 4cmもの大幅な切り詰めだ。 実はエアロ切断はこれが初めてじゃない。以前にもわずかだが、切り詰めを行った事がある。 FRPでの補修もすでに経験済み。勝算はある。きっと上手くいく。しかし・・・・ そう思ったのが大きな間違いだった。------ 「フン フフフ〜ン♪」 鼻歌まじりで見る見るうちに切断は進む。 デザインの要をなすダクト穴も、ど真ん中から真っ二つに。 「な〜に、へっちゃらサ!」 ダクト穴が切断によりダクト穴でなくなることは、見た目上おかしい。 それは容易に想像できる。 埋めるにせよ、新たに下部を造形するにせよ、それは切ってから考えようと、そう思っていた・・・。 後先ばかり考えて、行動を起こさないのは良くない。 しかし後先考えずに行動してばかりなのは、もっと良くない。 案の定、切り詰めたスポイラーを前にし、呆然とたたずむ男の姿がそこにあった・・・・。
■第三話『見るも無惨な戯れの男』 「切ってしまったモノはしょうがない・・・。」 気持ちを切り替えるまでに、どれだけの時間がかかっただろうか…。 気を取り直して、ダクト穴の造形を試みる。 FRPの“型”に下地として用いられる発泡ウレタン・・・。 そんなもの手元にないので、発泡スチロールで型を作ってみた。 「そう、これは“型”。埋めちゃえばどうでもイイもの。」 決して順風満帆とは言えないが、ここまでスポイラー補修に、さしたる問題はない。 「イケる!」そう信じていた。 しかし、この根拠のない自信は、FRP成形でまんまと砕け散ることとなる。 FRPとは、ガラス繊維にポリ樹脂を塗布し、固まると頑丈な素材になるもの。 金属と違い軽量なうえ、錆びることもなく、比較的簡単に造形・加工・補修が行える素材。 ダクト下部の形状に合わせて、大まかなアールを描いて型取られた発泡スチロール。しっかりと接着してある。 FRPで塗り固めれば、以前より狭くなって復活するダクト穴。 意気揚々とガラス繊維を敷き、ポリ樹脂を刷毛で塗布する。すると・・・・。 どろ〜り どろろ〜〜んっ・・・(!?) 発泡スチロールが、どんどんと溶ろけ落ちて行く!( ̄□ ̄;) 型を失ったら、造形もなにもあったもんじゃない・・・。 もはやその後どうなったかなど、語るまでもない・・・。 ただでさえ硬化に一日以上を要するFRP。 これ以上作業を続ける気をなくすには、十分すぎる程のアクシデントだった。
■第四話『悪魔の囁き別物購入』 型に使った発泡スチロールの溶解というアクシデント。 ガラス繊維は重力に逆らうことなく崩れ落ちていく。 補修作業は暗礁に乗り上げた。その精神的ダメージは大きい。 「もうこれは使い物にならんっ!」 「新しいの・・・買っちゃうか?」 「っつーか、金ないだろっ!!」 「デザインにも飽きてたし、この際だから・・・」 頭の中で繰り広げられる葛藤。 無理もない。 補修する気力も残されてなければ、補修出来たとしても、それが不格好にならないという保証もないのだ。 別のフロントスポイラーを探そう。 今までのほど分厚くないモノ。それでいてサイドスポイラーとのデザイン的な違和感が少ないモノ。 なにより自分の好みのモノ。 そして見つけた“LUCKY STAR”のフロントスポイラー。 丸みを帯びたフォルムでアメリカンなテイストのLUCKY STAR。実は昔から好きだった。 当初、予算の都合で格安エアロにしたが、もしかするとこれは良い転機かも知れない。 しかも!チラッと覗いたYahoo!オークション。 そこに中古のLUCKY STARのフロントスポイラー、7000円で出品されているではないか! 偶然にしては、あまりにも出来過ぎている! オークション経験のない男であったが、すかさず手続きを済ませ、入札。 「まさに運が味方している…」 その時はそうとしか思えないほどの喜びだった。 出品された“お目当て”は底面に擦った跡、多数。表面に傷、一カ所。ただ色がブラックだった…。 けれど「それがどうした。」( ̄^ ̄) 今、男の目の前にあるフロントスポイラーはそんなもんじゃない状態なのだから・・・。
■第五話『伏兵現れ被害拡大』 オークション落札日までは、まだ日にちがある。 そこでそれまでに、スポイラーを外したバンパーの補修作業に取りかかる。 旧スポイラーはバンパー上部まで覆う大型のハーフスポイラーだった為、 新しいモノに換えると、これまで隠れてた部分が露出する。 くっきり残った旧スポイラーの跡除去、不要になる取付穴のパテ埋め、数カ所ある傷補修・・・・・・。 まさに気分は、LUCKY STAR歓迎ムード 一色といったところ。 この作業の中で一番のネックとなったのが、旧スポイラー購入直後、隙間塞ぎに行った、 “シリコン・コーキング” 施工直後は、美しいほどバンパーとスポイラーを一体化してくれた。 しかし今、バンパーにこびり付いたシリコンは、かなり汚らしい…。 しかもこれ、どうやっても落ちないのだ。 「やるんじゃなかった。」(-。-) カッターやシンナーでちまちまと、削り落とす。 30分。・・・・1時間。・・・・2時間・・・・ 一向にきれいになる気配はない。(-_-X) 半ばやけくそ逆ギレ状態で、#120の紙ヤスリ(かなり荒い)を手にする。 「オラオラオラオラオラオラッ!(by承太郎)」シャカシャカ シャカシャカ ・・・・ 「これでもか!これでもかぁ〜!」シャカシャカ シャカシャカ ・・・・ 15分後、あれほど頑固だったシリコンも、一網打尽。 それもそのはず。塗装ごと削り落としているのだから・・・。 我に返って見渡すと、そこにあるのは傷だらけになったバンパー。 パテ埋めし、再塗装しなければならない。 自分の首を自分で絞めていることに、本当はちょっぴり気が付いていた。-------- シリコンと言う思わぬ伏兵出現に、事態の悪化はバンパーにまで及んだ事になる。
■第六話『自業自得の行き着く先』 バンパー補修は思いがけず大がかりなモノとなった。--------- 前回、シリコンを削り落とした傷にパテを盛る。 翌日、硬化したパテを、耐水ペーパーで綺麗に馴らす。 ついでに塗装の前に洗車してみたりして♪ はっきり言って順調だ。 ここまで悪くなる一方だった状況。でも、もうすぐおさらば出来る。 オークションの落札日は今夜。これまでの苦労もきっと良い思い出になる。 ようやく希望の光が射してきたみたい? そしていよいよ塗装の時が来た。 1時間ほどぬるま湯につけた“プレミアムホワイトパールのスプレー” これでもか、と言うほど良くシェイクした“プレミアムホワイトパールのスプレー” なのに吹き付けても全然色が付かない“プレミアムホワイトパールのスプレー”凸(-_-メ) バンパーの黒い下地が見えている所など、ちょっと薄くなっただけだ。 気長に吹き付けと乾燥を繰り返す。 しかしいくら塗っても下地が透けて見えている。 「これしきの塗装に、スプレー缶1本使えってのか!?」 普段仕事で使っている“錆止めスプレー(グレー)”なら1度塗りで充分。 インパネ塗装に使った“シルバーのスプレー”も、せいぜい2度塗りで見事に仕上がった。 なのに・・・。 塗装は焦らず、少しずつ塗り重ねていくのが鉄則。------- そんなことは知っている。 しかし何度も繰り返していくうちに、イライラがつのる。 無意識のうちに、吹き付ける量が増えていたのだろうか・・・ だら〜〜り 一番目立つ正面、長さにして30cm、思いっきり液だれしてしまった。 「もうイヤだ・・・・。」(T◇T) 「遠まきに見てもこれはかなり目立つ。というかそれ以前に、ムラだらけじゃないか!!」 燦々たる仕上がりに、慰めの言葉もない状態。 後向き男の決まり文句・・・ 「あ〜あ、やるんじゃなかった…」炸裂。 思えば、別に致命傷を受けた訳でもないフロントスポイラーを、自ら切り落としお釈迦にし、 自ら行ったシリコン・コーキングでバンパーを傷モノにし、自ら選んだ再塗装に失敗し・・・、 すべて自業自得が招き入れた事態じゃないか! とりとめも付かない状況に陥り、募る思いは・・・ 「あの頃に戻りたい…。」(T_T) ---------------
■第七話『してはいけない皮算用』 Yahoo!オークションで入札中のLUCKY STARのフロントスポイラー。 毎日チェックしていたが、特に動きはない。 最高額入札者にはいつ見ても、Yahoo! ID“kazkin2120”だ。 しかし油断は禁物。 中古とは言え、ブランド・傷の程度を考えると、フロントスポイラーが7000円はかなり安い。 今は黙って目を光らせている輩が、きっといつか現れるに違いない。 ----- そして落札時間が目前に迫る ----- 所用を済ませ、急いでネットに接続。オークションのページを開くと・・・。 最高額入札者に、見慣れぬYahoo! IDが! 「だれなのっ!?」 すかさず反撃を試みる。この時、残り時間あと3分! 「初入札だからって、ナメるなぁ〜!!」 「9000円だ!」・・・「くっ」・・・ 「えーい!12000円!」・・・・「ぬぬぬっ」・・・・ 「15000円!どーだ!!?」・・・・・・・・ ・・・・「そこっ」「ビシク〜!」?? ・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・ ----- オークション終了 ----- ひゅるるるる・・・・・(ToT) 持ってかれたぁ〜! 初体験のオークションは、ほろ苦い思い出を残しつつ、幕を下ろした。 落札価格15500円。充分出しても良いと思える金額だ。 それを7000円で、手に入れた気になってた事が間違いだった。 「自分以上にこのスポイラーを必要としている者は他にいない」 そう思っていたのが間違いだった。 “自動入札システム”をよく解っていなかったらしい・・・。 気を取り直して、今一度オークションを覗いてみる。 だが豊富な出品物の中でも、 新型オデッセイ(RA6,7)用・中古・フロント(のみの)スポイラー・ (塗装に恐れをなしたことから)プレミアムホワイトパール色・好みのデザイン&ブランド・安い値段・・・・、 これらすべてを満たすモノなど、そうそうない。 かと言って妥協はしたくない。 不意に、理想が高すぎた女性の結婚しそびれる絵図が浮かんできた。 「もう、ずっとこのままなのかしら・・・。」 不安が脳裏をかすめる。たかが一回、オークション落札に失敗しただけの事。 しかし度重なる失敗に精神的ダメージは大きく、それは前向きな思考の欠如を招いていたのである。
■第八話『復活の狼煙』 あの一連の出来事から数日が過ぎた。-------------- 毎日、Yahoo!オークションのチェックは欠かさず行っている。 ミニバン系雑誌の通販広告には、いくつかの付箋が貼ってある。 「あの頃と同じだ」 納車頃のエアロ探しを思い出し、自然と笑みがこぼれる。 開き直った男の日々には、平穏が戻りつつあるようだ。 しかし、あの忌まわしい過去を呼び起こすモノは放置されたままだった・・・。 狭い仕事場の片隅に横たわったままのフロントスポイラー。 かなりの敷地を占拠している状態だ。 このままにしておく訳にはいかない。 「解体しなきゃ…。」 皮肉にも、途中で作業を投げ出した男とは対照的に、 FRPはゆっくりながらも硬化し続け、スポイラーにへばりついて固まっていた。 しかも、およそスポイラーの形状を無視した状態ではあるが、ちゃんとダクト穴になっているのだ。 「 !? 」 -----------【分析】----------- FRP成型時に、3つの現象が起きていたと考えられる。 その1:発泡スチロールの型がドロドロと溶ろけ落ちる現象。 その2:型に敷いたガラス繊維が、型を失い崩れていく現象。 その3:ポリ樹脂がガラス繊維にしみ込みながら硬化していく現象。 現象その1の速度は速く、10分後には殆ど跡形もない状態で、現象その2もそれに伴い、 造形したダクト下部の形状を崩していった。しかし現象その3が進むにつれ、現象その2は次第に治まった。 結果、予定した形とはだいぶ異なるが、なんとかダクト穴に見える状態にはなったのだ。 ----------------------------- これが意味することはなにか?---------------- 解体して捨てるのはたやすい。 しかし決して安くないエアロパーツ。 大がかりな補修のために、大量に買い込んだFRPの材料一式。 「勿体ないじゃないか…。」 否、それよりもなによりも、途中で投げ出したことに、 「自分が悔しくはないのか?」 自分を偽り平静を装うのはもうやめだ。 そう、これまでおちゃらけ気分で失敗話を暴露していた愚かな男。 だが、心の底では不甲斐ない自分に腹が立っていたのだ。 途中で挫折することは、この先続くであろう“いじりLIFE”・・・ それを消極的なモノにしてしまいかねない。 それが男にとって、一番あってはならない事。 再び刷毛を握りしめた男の鼻息は荒い。この時からFRPの異臭が好ましく思えていたらしい・・・。
■第九話『カムバック・アゲイン』 一時は捨てる事まで考えたフロントスポイラー。 だが今、再び復活することを信じ、FRP成形を行っている。 その一方で、Yahoo!オークションも覗いている。これはもう習慣になっていた。 ある日、頂いた情報をもとに、一件の出品物のページを見てみた。するとそこには、 --“新型オデッセイ(RA6,7)用・AZECT製フロントスポイラー・プレミアムホワイトパール・中古・9,000円”-- 「おぉ!? ピッタシじゃん・・・・」 「補修中のスポイラー、見捨てはしないよっ。・・・でも・・・・」 入札ボタンを「ぽちっとな!」(* ̄∇ ̄*) まったくもって節操のない男である・・・。 一度目のオークション失敗の経験から、予め予算一杯の額で入札する。 「来るなら来てみな!」 誰に言っているのだろうか? しかし、他の入札者は現れず、不戦勝で最低価格の9,000で手に入れることが出来た。 数日後、無事にAZECTのスポイラーは届き、いよいよ取付の時が来た。 期待に胸が躍る。あれからずっとこの時を待っていた気がする。 「装着完了〜♪」 久しぶりに見る迫力と威圧感のある顔つきに酔いしれる。 「エアロの重厚感がたまらないのよね〜♪」 ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・ 「ん?」・・・・・「重厚感??」・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・ 「げっ!」・・・ 「すんげー分厚いよ、これ!」・・・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ 「はっ」( ̄□ ̄;) ・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ 「ふりだしに戻ってる…」 また擦りまくりの日々が始まろうとしていた。 なぜ、途中で気が付かなかったのか? これまでに、かかった費用はなんだったのか? 計り知れない程、費やした労力はなんだったのか? やはりスポイラー補修は、続けていかねばならないのか? 前よりも一段と低さを増した新しいフロントスポイラー。 大破する日は、そう遠くないかもしれない。 もう、早くこの呪縛から逃れたい。(T_T) ---------- いつの日か、この物語に終わりは訪れるのだろうか・・・。 終
m(__)m ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。 つたない文章、訳の分からない言い回しばかりで、スイマセン。 また、後日談が出来たら、綴りたいと思っています。 写真も、しょぼいじりの方に、そのうちアップします。f^_^; m(__)m
〜擦り擦りFスポ編〜